2011年9月24日土曜日

iPhoneはなぜ繋がりにくいのか?(松本盆)


松本盆(IT企業勤務)さんより投稿がありましたので、掲載いたします。企業業績数値詳細等を検証しておりませんので、ご留意下さい(東京プレスクラブ事務局)

東京プレスクラブ担当者様、初めて投稿します。長年IT企業の営業マン従事しています。技術は弱いので、専門的な部分は適度にごまかして、「今度、技術の分かる者を連れてきます」とあしらっています。ただ長年、この業界にいますので、耳学問は発達しているからか、部長さんクラスの接待等での話題づくり役として重用されてます。突っ込まれると弱いですが。


最近、女子社員の多いクライアントの所にいくと、KDDIからSBiPhoneに乗り換えた若い女子が目に見えて増えています。どの会社でも聞くのが「回線がつながらないです」という愚痴。先日は「iPhoneってつながりにくいんですね?macもインターネット遅いんですか?」って聞かれました。「いや、それはiPhoneだからではなく、SBの回線の方に問題があるんだよ」と優しく教えてあげたんですが。

では「なぜSBの回線はつながらないのか?」と言われて答えられないと困るでしょう。ここで、耳学を披露するとそれは1980年代、中曽根内閣によってはじめられた行政改革による三公社五現業の民営化のあたりからスタートする長い歴史を押さえておかなければならないわけです。

1980年代の中曽根行政改革によって、電電公社はNTTに民営化されたわけですが実はこの問題は、こちらではない。もうひとつの大きな目玉であった国鉄(日本国有鉄道)のJR民営化の方からはじまるんです。

国鉄はもともと小さな国家みたいなもので、電力も自家発電システムを追求してきたし、通信についても東海道新幹線沿いに光ファイバーを敷設して、独自の通信回線を確保していました。

通信自由化を迎えて、このノウハウを活かして、日本の大手商社と組んで立ち上げたのが、日本テレコムという会社です。みんな夢を見ていた時代なんです。鉄道線路は日本中にネットワークされていますから、自分の土地を使って光ファイバー網を理論上では構築できる。ところがこれがうまくいかなかった。官僚みたいな会社と大会社が組んで、新しい事業に挑戦するのは無理でしょ?やがて、やる気を失って英国系の通信会社であるボーダフォンに叩き売る。その時にボーダフォンが同時に手に入れたのが、日本テレコム系の携帯電話会社であるJ-フォンなんです。

ボーダフォンの傘下になったJ-フォンは、「写メール」の大ヒットで、プリクラブームの延長線上にあった若い世代の顧客を獲得しました。一時は、ドコモについで業界2位になったこともある。2003年ぐらいかな?ボーダフォンは儲かった。どのくらい儲かったかというと、2005年の決算でいけば、売上高14700億円、経常利益1540億円です。すさまじい数字。

問題は、この経常利益。携帯電話の成長期だから、本来であれば基地局の整備に回すべきものなんです、この利益を。ところが当時のボーダフォンは、この利益を設備投資に回さずに本国へ送金してしまった。覚えている人もいるでしょう。当時のボーダフォンのつながりの悪さは、今のSBよりもひどくて、なにしろドコモからボータフォンの携帯に「メールしても届かない事件」が多発しました。

それでもボーダフォンは設備投資をしないで、ひたすら利益を捻出して本国へ送金しちゃった。こういうの、合法的な植民地政策といえませんかね?まあ今でも「アマゾン方式」は健在ですが。携帯電話は、設備投資をせずに一定程度の顧客数を確保していれば、チャリンチャリンと現金が落ちるビジネスだから、本来しなければならない設備投資をしないで、顧客は勝手に不満にさせといて、ひたすら利益をあげて本国に送金してたと。

もちろん、その間にもドコモとKDDIは、地道に設備投資を続けていたわけですよ。そして、儲けるだけ儲けて、回線状況がにっちもさっちもいかなくなった時点で、「ここが潮時」と実に17,500億円で会社ごとSBに絶妙に売却した。それでSBJ-フォンの経営権を握るわけですが、この10年間で蓄積された通信インフラの設備投資の格差は、簡単に追いつけるわけがない。

ボーダフォンは、日本で吸い上げた資金を、そのままインドテレコムに投資したらしい。日本の企業も、海外で同じようなことをしているのかもしれません。ただ欧米の長年の植民地政策のノウハウにはかなわない。日本社会に骨をうずめるつもりもなく、「いつか手放してやろう」と最初から思ってたんだから、設備にお金なんか使うつもりはサラサラない。

 ボロ携帯会社を引き受けたSBは、孫社長の直感でiPhoneを導入し、イメージ戦略で新規会員の純増を続けています。新規会員というのは、商品の中身を吟味しないで、イメージだけで購入する顧客であり、その獲得のために膨大な広告宣伝費をかけているわけですね。実際に使ってみてから契約するんじゃない。しかも契約すると、なかなか解約出来ないんですね。日本では当然の事として受け入れられていますけど、これ問題ないですかねー?

こうした訳で、既存の会員が支払っている通信料は、本来なら既存の会員のためのサービス=つまり基地局の充実に使うべきなのに、新規会員の獲得のために多く使われている。だとしたら、おかしなことですよね。ボーダフォン時代の遅れを取り戻すためには、その分も設備投資に回さなければ、サービスを維持できないはずなのですが・・・。

KDDIiPhoneと契約したというニュースが突然流れ出して、ネットで話題になっていますが、KDDIからSBiPhoneに流れた数がおそらく多かったのだろうと思いますね。それでKDDIサイドもこれはなんとかしたいと思って、Appleからの相当に無理な契約条項も受け入れざるを得なかったのでしょう。

普通であれば、ドコモがiPhoneを出せば良いのに、それが出来なかったのは、ドコモの「大人の常識」では、とてもビジネスとして契約出来ない要求をジョブズからされたのだと思いますよ。別に契約のドラフト見た訳じゃないですけど。SBは、ジョブズの無理に、孫社長の独断で乗った。それは、実業のビジネスというより、イメージ戦略によって株価を上昇する時価総額ビジネスを実践しているからですね。SBが実際の契約数を問題にしないで、純増だけをアピールするのも、それが時代のトレンドだというイメージ戦略なんでしょう。

さて、機種が同じiPhoneだとしたら、お客さんは、「回線にお金をかけてきたキャリア」と「回線にお金をかけなかったキャリア」のどちらを選ぶかは、明白だと思いますね。